「電網浮遊都市」の中枢へ...
書店のライトノベルコーナーに足を運べば、アニメ、ゲームなどの流行がいち早く感じられるというのは言い過ぎだろうか。コンテンツの消化スピードが加速する昨今、時勢にマッチしたテーマを持つ、良質な原作を探し出すことは、関係各者の急務とも言える。
日々スマホゲームをプレイする諸氏もまた、ヒット作品のゲーム化やメジャータイトルとのコラボレーションで、新たな楽しみを見出すことも少なくないだろう。
そうした、拡大を続けるライトノベルというジャンルにおいて現在注目を集めつつある企業がある。ポータルサイト「アルファポリス -電網浮遊都市-」を運営する、株式会社アルファポリスだ。聞けば、そのアルファポリスがあらたにゲーム事業に参画するという。
今回はアルファポリス編集部の塙綾子女史、太田鉄平氏にアルファポリスの事業展開について伺うと共に、ゲーム事業部の所篤志氏にゲーム事業へアプローチすることとなった経緯をインタビュー。前後編にてお届けする。
インタビュー後編はこちらから
株式会社アルファポリス
塙 綾子(写真左)
編集本部本部長
太田 鉄平(写真右)
編集一部 部長
所 篤志(写真中央)
ゲーム事業プロデューサー
(敬称略)
「アルファポリス」とはどのような会社?
――アルファポリスとはどのような会社なのかご紹介ください。
塙:Web上の小説やブログ、エッセイなどを登録・投稿していただくポータルサイトを運営しており、その中から需要があると見込めるものに対し、紙の本として出版化するといったことをメインの事業としています。
――有名なブロガーや書き手のWeb作品を書籍化するといった?
塙:そうですね。ですが、有名・無名にかかわらず、良いコンテンツならば積極的に書籍化を検討しています。
――たくさんの作品や投稿があると思いますが、どのような基準で選考するのでしょう?
太田:Web小説の場合、様々なジャンルや傾向がありますが、その中でも当社に集まるのが「ファンタジー」「女性向けロマンス小説」が大きな2軸としてあります。もちろんその他にも「青春もの」「ホラー系」「時代小説」などもありますね。そうした多数の作品の中から、書籍にしたらより多くの方々が買ってくれ、楽しんでもらえるであろうもの、つまり売れるものを編集部一同で議論を重ね厳選しています。
――サイト名の「電網浮遊都市」という文字を見て、サイバーパンク的なものを連想してしまいました。出版社…という認識で良いのでしょうか。
太田:基本的なスタンスとして、出版事業だけにこだわるのではなく、様々な小説や漫画、ブログやエッセイ、さらにはゲームや映像まで、ネットと融合して様々なコンテンツを様々な形で提供していく総合エンターテインメント企業、というイメージなんです。
――なるほど。どのようなサービスを利用しているユーザーが多いのでしょう。
塙:読みに来られる方もいれば、投稿される方もいます。個人でWebを通じて出版の申請ができるシステムもあるので、書き手さんなどには、利用しやすい環境だと思います。
太田:読み手さんが自らWeb上で見つけた作品や、お気に入りの作家さんなどを応援して、いずれその作品が書籍化されたり、有名になったりということもあるでしょう。応援していたローカルアイドルがメジャーになるような喜びがあるかもしれませんね。
利用ユーザーの傾向、作品のジャンル
――Web上で小説を読むという習慣がなく、恐縮なのですが…どのぐらいのユーザーが利用されているのでしょう。
塙:だいたい当社のサイトには一日に5万人のアクセスがあり、漫画や小説を楽しんでいただいてますね。
――それはすごいですね。そうした作品の中から書籍化される作品もあると思いますが、これまでWeb上で読まれていたユーザーの反応はどうでしょうか?
塙:ユーザーの方によって様々ですね。Web上で読んでいただいた方の中でも、買う人、買わない人それぞれいらっしゃると思いますし。ただ、「本」という形になって、ご自分の手元に置けることを喜んでくださる方は多いです。
――やはり書籍化するからには購入していただきたいところ…ですか?
太田:購入者の中で「既にネット上で読んだことがあって、作品のファンだから購入した」という方は2割弱で、意外と少ないんですよ。8割近い方が「書店で見かけておもしろそうだと思った」っていう購入動機のようなんです。
――ユーザーの男女比、また取り扱っている作品の中で多いジャンルはいかがでしょうか。
太田:タイトル次第で変わってきます。男性向け、女性向けとありますからね。
ですが全体的に見れば男女ほぼ半々ではないでしょうか。ジャンルとしてはファンタジーが多いです。ただ、それにも男性向け、女性向けの作品があり、もっと細分化されていくんです。
――ファンタジーというと剣と魔法の世界をイメージしますが、男性向け、女性向けで違いはあるのですか?
太田:いまの主流だと男性向けは「現代世界の青年が、異世界にトリップして~」という大まかな設定の中、「能力」「活躍の仕方」「戦うこと以外の魅力」などが細分化されて、様々な作品が世に出ています。
塙:女性向けでは、もちろん主人公の性別が違います。「現代世界から異世界に~」といった共通部分はありますが、「戦術」とか「特殊な能力」などよりは、「特殊能力はあるけど、目立たないように生きよう」とか、「地球の食文化を伝えるべくカフェを開く」といった比較的等身大の生き方を目指す主人公が多いですね。
――読者の年齢層はいかがでしょうか?
太田:20代後半~30代、40代あたりの方が多いですかね。かつて文庫サイズのライトノベルなどをたくさん読まれていた方々が、「少し読み足りない」「もう少し大人向けの作品を」と思われて利用されているのではないでしょうか。
塙:当社作品の主人公は、学生より社会人が多いといった点も、購入者が自身を投影しやすい部分かもしれませんね。
――学生はもちろんですが、社会人がいきなりファンタジー世界に飛ばされると大変そうですね。会社に連絡しないとクビになっちゃいますし(笑)
太田:当社の人気タイトルで『とあるおっさんのVRMMO活動期※』というものがありまして、まさに作中の主人公のような世代から、もっと若い方にも幅広く支持を得ています。
※「38歳の社会人男性がVRMMOというゲーム内でマイナー職&不遇スキルを使って活躍する」という作品
『ゲート』のアニメ化がもたらした影響は
――なるほど、実に多彩ですね。では現在一番反響が多い作品は?
太田:数字的にはアニメ化した『ゲート※』ですね。新規のユーザーが入ってきたのが大きいです。
※『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』
――個人的にも拝見していますが、非常にクオリティが高いですね。
太田:アニメの制作に関わっている皆様が、細部にまでこだわって本当に必死になって作ってくださっています。ですから、ファンをはじめ多くの方に評価いただいているのは大変嬉しいことです。当社でも新規のお客様をいかにして増やせるかが課題だったので、その点では新たなユーザーが漫画や小説の購入動機になったりと、実際の数字にも現れていますね。
アニメ化に際して、原作に沿いつつ、どうすればアニメをご覧になるコア層の方々にご満足いただけるのかを、監督をはじめスタッフの皆様が熱心に考えてくださいました。その結果、主人公の伊丹が原作よりもやや正義感の強い印象になったりなど、良い意味でよりアニメ的な演出がなされているという部分もあります。
全ての作品が「無料」!?で読める
――アルファポリスではWeb上で全ての作品が無料で読めるのでしょうか?
塙:当社サイトに登録してある作品はすべて無料で読めます。
――「アルファポリスアプリ」と「アルファポリス小説投稿」というアプリがありますね。
塙:「アルファポリスアプリ」はアルファポリスのサイトを楽しんでいただくためのアプリになります。「アルファポリス小説投稿」はそのままですね、小説投稿用のアプリです。スマホから手軽に書く事が出来るので、書き手さんにオススメです。
――読めて、書けて、投稿も出来てと、全部が丸ごと詰まっていますね。アルファポリスに掲載された作品に刺激されて、自らも書く事に目覚めた方もいるかもしれません。御社の投稿サービスから実際に出版に至った方はいらっしゃるのでようか?
塙:実は投稿サービスが始まったのがつい最近なんです。投稿から連載、書籍化まで…となるとまだいらっしゃいません。ですが、今後はそういった作品も出てくると思います。
――期待しています。アルファポリスの今後、展望などをうかがえますか?
塙:Webサイトに関しては小説や漫画など、色々なコンテンツを充実させていき、より多くの方にアルファポリスを楽しんでいただきたいですね。今は特に漫画に力を入れています。出版の点数も含め大きく増やしていきたいところですね。もちろん小説についても『ゲート』に続くビッグタイトルを出していきますよ。
太田:読み物だけでなくアプリをはじめとしたゲーム化や小説の映像化などを視野に入れてやっていきたいと思っています。サイトが楽しくなったら良いなぁと。みんなが楽しめるWebサイトになったら凄いなと。
ゲーム事業進出への経緯
――ありがとう御座います。今のお話にあった「ゲーム」ですが、Web小説、漫画と展開されてきた御社がゲーム事業に進出する事になった経緯は…?
所:弊社は出版で成功、成長してきましたが、元々出版社を目指したわけではないんです。創業時から「総合エンターテイメントを追求したい」という事で始めていて、机一つ電話一つでできる出版業から手をつけてきました。今回は「ゲームに進出した」と言うより、やっと機が熟してきたので「ゲームの方も開始できるようになった」ということです。これから先には映像事業やキャラクター事業にも大きく広げていこうと考えた中の一環で、まずは「ゲーム」という形になりました。
――そうだったのですね。方向性やジャンルなど、ゲーム事業のコンセプトをうかがえますか?
所:ゲーム事業に新しく参入していく上で、他社様との違ったところ=独自性を出していかないといけないと。そこで「当社の原作を読んでくださるファンに楽しんで貰える」かつ、「ゲームに触れていただいた方が原作に興味を持っていただく糸口になる」というカタチを目指しています。
――すると御社の作品を題材にしたものになると。原作つきとなると、かなり大掛かりな展開なのでしょうか。
所:作品との連携も大事ですが、ゲームづくりで「大きなお金をかけていきなり勝負」ではなく、カジュアル、中規模、ある程度大きなゲームを平行して進めていって、それぞれのフィードバックを他のゲームの開発に活かしていくようなパラレルなカタチで進めています。
――まずは感触を確かめつつという所ですね。第一弾としてリリース予定のゲームについてお聞かせいただく事はできますか?
所:まずはカジュアルゲームとして「誰でも楽しめるもの」を目指していて、第一弾は「女性向けの原作を活かしたアプリ」を考えています。今後は、中規模のゲームであれば一定規模のサイクルを含んだもの、長期的に遊べるゲームとしては、当社に多くあるファンタジー系の作品で、多くの方に楽しんでいただけるRPGに近いタイプのゲームを出していく予定です。
前編は以上。後編ではアルファポリスによるリリース第一弾タイトルについて、
より突っ込んだ話を聞いていく。「女性向けの原作を活かしたアプリ」がどのような形になるのか、ぜひ期待してほしい。
(2015年9月インタビュー)
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