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近付けば消える黒い狐火。しかし決して燃え尽きたわけではなく、新たな火種が生まれていた。再び燃え盛る日のために、一人の少女の中に、ひそかに。

劫魔節が永劫の終わりを迎えても、リュドミラに気の休まる暇はない。若き団長のサポート、劫魔節の混乱に乗じて悪事を働く輩の盗伐、残存する魔物の殲滅…。次々発生する問題に心労は尽きないが、充実した日々は彼女の望むところでもあった。とはいえ、時には立ち止まって休むことも重要。向上心の塊であるリュドミラだからこそ、休める時に休むことの重要性はよく理解している。自分の限界を超えたところで、壊れてしまっては意味がない。今の限界を超え、よく休み、新たな限界をさらに超える。それを繰り返すことが本当の修行だ。明日からまた自分の役目を全うするためにも、明日の自分が今日の自分を超えるためにも、今日は全身全霊で息抜きしなければ。

レクイエムの歴史は、人類の歴史と言ってもいい。

最初のレクイエムは先史時代に遡る。
かつての巫女たちは、それぞれが発見された国に抱き込まれ、レクイエムはさながら代理戦争の様相を呈していた。

やがて、平和を求める声に呼応するように、女神パンドラを讃える教団が立ち上がる。
それ以降、巫女は発見され次第教団に保護、隔離されるようになった。
教団設立から約千年、巫女たちの名前とギフトはすべて記録されてきた。
巫女たちが授かるギフトの種類はレクイエムごとに様々だが、毎回のように現れるギフトもある。
それに対して、アンタレスの授かったギフトには前例がない。
教団が彼女を見つけられないのはあるいは、それが原因かもしれない。

宿命付けられてきた、血塗られたレクイエムの歴史。
アンタレスならばきっと、そんな世界の理だって変えることができるに違いない。

―――女神の「希望」。
こんなにも希望に満ちた光を目に宿した巫女は、今までいなかったのだから。