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かけがえのない人たちとの別れの後、死の始原精霊が彼女に命じたのは「正しくない死」の回収であった。アンデッドやゴースト。理に反するものによって正しく死ねなかったものを、正しき死に導くこと。
だがリゼットは思う。アンデッドの力を持って生まれなおした自分は「正しい命」なのか。終わりに「正しい死」はあるのか。そもそも自分は何者なのか。
ただその答えが出るのは時間の問題であった。リゼットはまだ気付いていないのだ。甲冑騎士だけでなく、毎夜毎夜、悪漢たちから弱きを守る彼女を人々が「シンジュクを守る不死身のヒーロー」と呼んでいることに。

アーサー王は、否、少女アーサー・レイドラムはこの結末を予見していたのだろうか。そうだとするのなら、彼女の涙に、慈愛にはどんな意味があったのだろう。孤高の道を選んだ彼女はどのうような思いで円卓に座していたのか。
彼女の罪と罰は人類の未来を決める『選定』の決戦の果てに。

落ちこぼれであった自分が初めて人々から認められ必要とされる――アリスの胸は歓喜と充実で震えた。しかし彼女はまだ気づいていなかった。大いなる力は大いなる代償を払うことに。

―――任務報告。我が主。私はやり遂げました。昨夜中研いだ刃は奴の胸に奥深く刺さり、奴は声を上げることもできず、ただ茫然と私を見つめるばかりでした。浮き出ていた感情は恐怖と混乱のみ―――自分がこのような目に遭う理由に心当たりは全くないという様子でした。後悔の感情はほんの一寸も、見出すことができませんでした。我が主。私には理解できないのです。この男はかつて、私から全てを奪いました。それなのに、死の淵においてすら何も思い出すことなく―――（ここから先は判読不能。筆跡が荒れ、インクが液体で滲んでいる）